自社が受託開発に手を出した話の続きです。
私は4年目の半ばに本社に戻るタイミングがあり、そこで会社として初めての受託開発プロジェクトに入ることになったわけですが、その時点で、そのプロジェクトの作業を行っていたのはその年の新人2人だけでした。
受注がかかった提案を、新人2人がやっていた
受注が決まるかどうかの提案段階です。それを担当していたのが、その年の新人2人。
時期にして9月頃だったと記憶しているので、新入社員として入って来てまだ半年も経っていないぐらいの新人2人が、営業に連れられ何度か客先へ行き、技術側の人間としての振る舞いを求められていたということです。
いま考えると、とんでもないことをしていたなと思います。
「なんで新人2人だけにそんなことを任せられるんだ…?」という戸惑いの感情もあれば、何を考えてそんなことができるのかさっぱり分からない(理解の外)という混乱に近い感情もありました。
受注できるかどうかの極めて大事なタイミングに新人2人しかいない。私が途中参加することを見越しての計画だった?としても、私も製造まわりの経験しかしてきていない、当時たかだか4年目のいち社員です。
本当に…びっくりしました。
本社に残っているのは、2種類しかいない
以前別の記事で書いた通り、あの本社にエンジニア職の社員が残っていることは普通ありません。エンジニア職の社員は全員、客先に常駐してなんぼの業界だからです。
そのため、自社に社員が残る理由としては2種類だけになります。
- まだ現場に出せない新人
- 契約の合間等の事情により次の常駐先が決まっていない人
前者が、あの提案をやっていた2人です。そして私は、後者でした。ちょうど、それまで常駐していた客先での作業に区切りが付き、契約をいったん解除するのに都合が良い状態だったのです。
これはSES企業の根本的な矛盾だ
SES企業は、自社の仕事に自社の技術者を出せません。
技術力がないから自社開発ができないのではありません。技術力のある人は常駐先で重宝され、なかなか本社に戻ってくるタイミングがないのです。だから、優秀な社員は自社の作業に入れる余裕などなかなか無いのです。その意味で言うと、私はたまたまタイミング的に契約の合間だったからと上述したものの、技術力が期待に沿えるものではなく客先から契約を更新してもらえなかっただけなのかもしれません。
その技術力が会社に残らない
もう一段、深い問題があります。
常駐していると、いろいろなものが身につきます。技術の使い方、問題の解き方、現場で求められるスキルの水準、人との合わせ方。
ただ、それはその現場に行った本人にしか分かりません。
報告書に書けるものではありません。帰社日に話す時間もありません。自社との接点は年に14回しかないのですから、共有される機会がそもそも存在しません。
究極の属人文化です。
10年やっても、20年やっても、SES企業には何も積み上がりません。あくまでも一般論で語れるような「こういうときはこういう風に動きましょう」という当たり前の話、本を見れば誰でも分かるような当たり前の話だけしか頼れるものはなく、現場で直接見聞きした生きた経験が会社に積みあがることはありません。積み上がるのは売上の数字だけです。
だから、いざ自社で何かを作ろうとしたときに、頼れる蓄積がSES企業内には存在しません。人を集められないだけでなく、集めた人が参照できるものもない。それが、SES企業の受託案件です。

